20年以上の歴史を持つ世界最古のTCG、マジック・ザ・ギャザリング。
「もっともよく遊ばれているTCG」としてギネスに認定されているこのカードゲームは、長い歴史を持つものの宿命として、いくつもの深い闇と葬られてきた謎を抱えていた。
 しかし、その深い闇を晴らそうと戦う一人の男がいた。

その男は安佐 久太郎(あんさ きゅうたろう)!
人呼んで『ギャザリング探偵Q』!!

 これは闇の中、真実を追い求めた一人の男の物語である。


~都内 某豪邸~
(コンコン)
?「……こんばんは、安佐です」
ガチャ
金田 望夫(かねだ もちお)「おお…待っていたよ、安佐君…いや、ギャザリング探偵『Q』」

金田「夜分遅く申し訳ないね…何せ火急の用事だったから……」カツ カツ
Q「いえ、構いません。皆様はもうお集まりで?」カツ カツ
金田「ええ、こちらです」ガチャ

鯖須 張(さばす ちゃん)「旦那様、そちら方は?」
山本 デンドロビッチ(やまもと でんどろびっち)「一体こんな遅くに集められて…どうされたのですか?」
高司 田宮麿(たかつかさ たみやまろ)「んっん~!旦那様ぁ~ん!?理由を教えて下さいましぃ~ん!」

Q「ほう…この方たちが今日屋敷に出入りしていた使用人の方々ですか…」
高司「んっん~、それが何か?」

Q「金田さん、この中に貴方の『アルファ』を盗んだ犯人がいるということですね?」
3人「なっ!?」

鯖須「どういう事ですか、旦那様!?」
山本「私たちが…えっと、ア…アルファ?を盗む?何かを盗むなど、そんなことはするはずがありません!」
高司「旦那さまぁ~ん!事情をお話下さいましぃ~ん!!」

金田「実はな…今日、私の部屋から『アルファ』のパックが無くなっていたのだ…」
Q「ちなみにその『アルファ』はどのような状態で置いてあったのですか?」
金田「透明なフォトフレームに挟んで私の机の上に…」
Q「なるほど、誰でも手にとれる状態だったのですね。ちなみに金田さんの周りで『アルファ』を欲しがっていた方などはいらっしゃいましたか?」

金田「いや、特には…。それに防犯システムも作動していなかったし、机の上も『アルファ』が無くなった以外そのままだったんだ…。そうなると身内の者の仕業としか思えないのだよ…」
金田「しかし彼らに聞いても知らないと…、あれは私が還暦を迎えた時に開けようと思っていた大切なパックだったのに…うぅ…」
Q「心中お察し致します」

山本「私が旦那様の部屋を掃除した時は特に何も変わっていなかったと思ったのですが…パック?ですか?」
Q「そう、これです」ピラッ

山本「ああ、確かにそんなのが机の上に飾られていました」
高司「んっん~、随分と古そうなものだけど…それってどういうものなの?」
鯖巣「……」

金田「きゅ…Q君!なぜ君がそれを!?」
Q「これはマジック・ザ・ギャザリングというカードゲームが入っているカードパックです。まぁ、とりあえず開けてみましょう」ビリッ

山本「随分レトロなイラストですね~」
高司「旦那様の思い出の品なのかしらぁ~ん?」

金田・鯖巣「あああああああああああああああああ!!」ガタッ
山本・高司「!?」

金田「きゅきゅきゅQくううううううん!!君は!なんてことを!したんだ!!」
鯖巣「Q様!何故そのようなことを!?」

山本「え?え?何かいけないんですか?」
金田「山本君!今Q君が開けたパックは『アルファ』と言って、MTG最初のブースターパックなんだ!未開封のものは1千万円を超えるんだぞ!」

山本「うそ?一千万!?」
高司「車より高いじゃない!!」

金田「ああ…君はなんてことをしてくれたんだ…」
Q「金田さん、よく見てください」

金田「別に見ても…ん?」
鯖巣「これは…」

Q「そう、これは私が作った偽物です。似たような袋を印刷して別のカードを入れただけです」
金田「なんだ…人騒がせな…」
Q「すみません、ですが…犯人は見つかりました」
金田「ほ、本当かね!?」

Q「ええ。犯人は…鯖巣さん、貴方だ」

鯖巣「!?」
他「!?」

鯖巣「わっ…私が!?ご冗談でしょう!?」
Q「貴方は私がパックを剥いたとき、大変驚いておりましたね?これは価値を分かっていないと出来ない反応です」
鯖巣「か…カードの価値を分かっていたから…だからって、それだけで犯人とはいささか暴論ではないでしょうか?」

Q「アルファのパックはコレクターズアイテムなので、いくら価値が高くとも金品を換金するようにはいきません。一番確実なのはオークションに出すことですが、金田さん程のコレクターでしたら情報はすぐに入ってくるでしょうし、バレずに売り切るというのはまず不可能でしょう」
Q「では犯人は何故パックを盗んだのか?考えられる動機は二つ。自分もコレクターであり、アルファのパックが欲しかったから。もう一つは…買ってくれる知人がいるか…」
鯖巣「!?」

Q「どちらにせよ、犯人は深いカードの知識を持っているMTGプレイヤーだと想像されます。金田さんとの周りではアルファのパックを欲しがっていた方はいなかったようですし、自分がMTGをやっていなければアルファ・ブースターの話なんて出てこないでしょう」

金田「鯖巣君…本当かね!?」
鯖巣「ち…違うんですよ、旦那様。そのパックの価値はたまたまネット・ニュースで知っていて…。あの『子供が二千万円以上の未開封パックを開封してしまって弁償することになった』というニュースです」

高司「あぁ~ん、そういえばちょっと話題になってたかもぉ~ん」
鯖巣「でしょ?そうでしょう!?」

Q「ほう…では貴方はMTGのことについては全く知らないと?」
鯖巣「その通りです」

Q「…嘘ですね」
鯖巣「何ですと!?」

Q「貴方は私がカードを見せたとき、偽のパックだと明かす前だというのにネタ晴らしされたような表情をしていましたね!?それは何故ですか!?」
鯖巣「そ…それは…20年以上前のカードだというのに新しかったから…」
Q「ほう?このリバイズドのカードが新しいと?これも20年以上前に発売されたのに?」
鯖巣「うぐうううううううう!!」

Q「この違いが分かるなんて一般人や聞きかじりの知識だけでは無理です。鯖巣さん、貴方もMTGを愛するものとして真実を話して下さい」
金田「鯖巣君…君が…そうなのかね?」
鯖巣「………旦那様」

その後、鯖巣は自分がパックを盗んだ犯人だと認めた。
借金の返済に追われていたところ、知人のコレクターにそそのかされて犯行に及んだのだという。金田はパックも無事に戻ってきたのでこれ以上追及する気はないと言ったが、鯖巣は自ら責任を取って屋敷を去ることとなった。

~数日後~

鯖巣「それでは皆様、お世話になりました…」
金田「鯖巣君…」
鯖巣「旦那様…ご迷惑をおかけして本当に申し訳ございませんでした。私が金に目がくらんだばかりに…同じMTGを愛する旦那様の気持ちを踏みにじってしまいました」

金田「…鯖巣君、私は自分の還暦の誕生日にアルファ・パックの開封式をするつもりだ。その時は是非君にも来て欲しい」
鯖巣「旦那様……」
金田「その時は一緒にドラフトでもしようじゃないか(ニコッ」
鯖巣「旦那様…!!ありがとうございます…ありがとうございます…!」

山本「…こんなこというのも何ですけど、MTGっていいですね」
高司「そうねぇ~ん。恐ろしい部分もあると思うけど、本当はみんなで楽しむコミュニケーションツールだと思うわよぉ~ん?」
山本「…私たちもやってみませんか?」
高司「あんまり高いカードは勘弁ねぇん?(ニヤリ」



どんな闇の中にも一筋の光はある。
Qはその光をつかむために、これからも真実を暴いていく。




ギャザリング探偵Q 第1話「消えたアルファ」 終

コメント

おくたん
2014年7月10日9:46

続編期待!
そしてシリーズ化→漫画化→アニメ化まで行きましょうw

re-giant
2014年7月10日14:18

面白かった(こなみかん)

猛蔵
2014年7月10日19:46

<すーさん
ありがとうございます!
漫画化でコミケデビューとかしてみたいですねw

<re-gaiantさん
嬉しいです(こなみかん)

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