ギャザリング探偵Q 第3話「ドラフト殺人事件」 後編
2014年8月10日 ギャザリング探偵Q コメント (4)今田「いやいやいや、Qさん。え?飯塚さんが犯人って…。いや、それよりもどうやってパックで人の体調を崩させるんですか?そんなの出来るんですか?」
Q「それについては極単純な話です。ブースターパックの中に揮発性の高い薬品か、何かしらのガスを封入して被害者に吸わせたんです」ポチポチ
今田「え?そんなことしたら会場全体で異臭騒ぎが起こっちゃうじゃないですか!?」
Q「そこを詳しく説明するためには、まず倒れた被害者の事から詳しく説明する必要があります」ポチポチ
伍堂「…」
飯塚「…」
梅沢「…」
Q「まず、被害者の『逝け☆麺』氏ですが、彼は非常に素行もマナーも悪く、DN等でも有名な悪質プレイヤーです。構築ではトップメタのデッキばかりを使い、日記上では自分が使っているデッキ以外をとにかく馬鹿にして、負ければ『ブン回られた』と騒ぎ立てています。
大会に出ても勝てば相手のデッキにダメ出しをして、負ければすぐに不機嫌になってぶつぶつ言っているそうです。あと臭い。
そしてこれが有名になっている最大の理由でもありますが…パックを開ける時に鼻がカードに付く程に近付けて臭いを嗅ぐ悪癖があるようです。そして、それはドラフト中でも例外ではなく、むしろパックの臭いを嗅ぐために積極的に参加している節まであります」ヨムヨム
今田「あ…!!」
梅沢「…まぁ、あいつがどうしようもない奴だってのは知ってたけど、でもなんで伍堂が『逝け☆麺』に毒入りパックなんかをけしかけるんだ?なぁ、伍堂。お前あいつと知り合いだったのか?」
伍堂「いえ、そういう訳では…」
梅沢「なら伍堂が『逝け☆麺』を恨む動機なんてないんじゃないのか?なぁ、Q君」
伍堂「…」
Q「伍堂さんが『逝け☆麺』を恨む動機ならありますよ。それは伍堂さんが一番分かっているとは思いますが…まぁ、そこは私が言いましょう」
飯塚「!?」
Q「ところで伍堂さん、貴方は確か地元でMTGの大会運営をしていますね。確か…『KKK~Kamata Ka-do Kouyuukai~』…という大会で、毎週コンスタントに開いているようで素晴らしい限りです」
伍堂「え…?ええ…ありがとうございます。最近は常連の方も増えてきていまして…嬉しい限りです…」
Q「その大会に最近『逝け☆麺』が頻繁に出入りしているようですね」
伍堂「!!??」
Q「先ほど調べたのですが、先々月位に『逝け☆麺』のDNでこのようなタイトルの日記が投稿されていました。『地元の大会に凸って北www』。ここに乗せられている大会の『KKK~Kamata Ka-do Kouyuukai~』は伍堂さんが運営している大会の名前ですよね?」
伍堂「!!…はい……」
Q「そして伍堂さんの大会HPで公開している参加人数ですが、明らかに先々月から減っています。これはひょっとして『逝け☆麺』が大会に来てから減ったのではないでしょうか?」
伍堂「!!!!!!」
Q「これはあくまで憶測ですが…運営している大会を荒らされた貴方は『逝け☆麺』に対する恨みを募らせていたのではないでしょうか?それで今回の事件に至ったと…」
今田「いやいや、ちょっと待ってください!じゃあ伍堂さんは今回『逝け☆麺』がドラフトをしたいって騒ぎ立てるのを見越して毒入りパックを作ってきたってことですか!?」
Q「いえ、その可能性は低いと思います」
今田「え?」
Q「今日の伍堂さんの様子とTwitterのつぶやきを見る限りでは、普段から相当ストレスが溜まっているように見られます。そのストレスのはけ口として、普段から毒入りパックを作っていたのではないでしょうか?憎い『逝け☆麺』に叩き付けてやろうかと考えながら」
今田「伍堂さん、そうなんですか?」
伍堂「…」
Q「先ほど飯塚さんに見せて頂いたドラフトで使用したカードの中でコモンだけに何枚か裏側にしみが付いているものがありました。カードの並び順で考えるに、これらはパックの裏側に一番近いカードで、何らかの薬品がパックの裏から注入されていたという風に考えられます。
ただし、カードに少し染みつく位の薬品程度では普通体調を崩したりはしません。少し嗅ぐだけで気持ち悪くなるような強力な薬品は簡単には手に入りませんし、第一異臭騒ぎが起きて大会がめちゃくちゃになります。しかし、開封した直後に思いっきり吸えば話は別です。それならば弱い薬品でも体調は崩れる可能性は高くなりますし、異臭騒ぎも起こりにくいでしょう。
そして今回の被害者の癖を知りながらパックを用意出来る人物は伍堂さん、貴方しかいません」
今田「ご…伍堂さん、なんで今回に限って…」
Q「『今回』だからではないでしょうか?」
今田「?」
Q「今回のGPTトロウケアは200人を超える大盛況だったと聞きます。ここでもめ事が起きてしまったら大会進行にも影響が出るし、ヘッドジャッジである梅沢さんの負担も増える。そこで何かが弾けてしまった…」
梅沢「伍堂…このバカ野郎…、俺の心配なんかしやがって…」
伍堂「…」
Q「今回の事件は偶然に偶然が重なって起こってしまったことです。会場が熱中症になるほどに暑かった、『逝け☆麺』の体調が良かったら、もっとマナーが良かったりカードの臭いを嗅ぐ癖が無かったら、そもそも大会に来ていなかったら。そういった要因が積もり積もった結果起こってしまった、不幸な事故です」
今田「伍堂さん…Qさんの話、全部…デタラメ…ですよね…?」
伍堂「…いや、全部事実だよ」
伍堂「俺の大会にあいつが来てから全てがおかしくなったんだ…。
あいつが大会に出入りするようになってから急激に会場の雰囲気が悪くなっていった。言い争いは起こるし、あいつが参加するドラフトには誰も入りたがらない。常連だった人も離れていったよ…。あいつの癖を知ってからパックに薬を入れ始めるのにはそう時間はかからなかったよ。いつか我慢出来ない位にあいつが騒いだらこのパックでドラフトさせてやろう…と。そう思っていないと大会運営なんて出来ない位にストレスが溜まっていたんだ…。幸いにも今まで使う機会は無かったけど、今回は…どうしても我慢できなかったんだ…」
~GPTトロウケア 蒲田会場 2回戦~
逝け☆麺「すみません、ドラフトってまだですか?」
梅沢「え?ドラフトでしょうか?」
逝け☆麺「サイドイベント位開くんでしょ?GPTだし」
梅沢「…いえ、そのような予定はありませんが…」
逝け☆麺「はぁ!?マジかよ…クソが…」ブツブツ
梅沢「…なんだアイツ」ヒソヒソ
飯塚「DNで話題になってる『逝け☆麺』って奴です。伍堂さんの大会にもよく来てます」ヒソヒソ
梅沢「ああ、あのパックの臭いフェチとかいうのか。聞くに勝るクソ野郎っぷりだな」ヒソヒソ
今田「…騒ぎにならないうちにドラフト募集でもかけた方がいいんじゃないですかね?」
梅沢「それがさ…今日賞品のパック以外のブースターを忘れて、持って来てないんだよ…」
今田「マジっすか…」
逝け☆麺「…っち、ブン回りデッキばっかでやってらんねーわ…」ガンッ
伍堂「!!…すみません、椅子を蹴らないで頂けますか?」
逝け☆麺「…ち…すみませんでしたー…」
梅沢「…なぁ、あいつ摘み出していいか?」
飯塚「ちょ!?それはちょっと…」
梅沢「このままにしてたら他の参加者にも迷惑がかかるし、あんなのにコミュニケーションゲームやる資格ねーよ」
伍堂「う…梅沢さん、言いたいことは分かりますが、ここでもめたら大会の進行にも影響が…」
今田「梅沢さん、俺も手伝いますよ」
飯塚「今田さんまで!!」
ギャーギャー
伍堂「(なんでこんなことになったんだ…どうして…どうして…)」
伍堂「(………)」
伍堂「(…そうか…)」
伍堂「(全部あいつのせいだ…)」
伍堂「梅沢さん。私物のパックならあるんですけど、それで出来ませんかね?」
梅沢「ん?いいの?」
伍堂「はい。是非使ってください」
梅沢「じゃあお言葉に甘えて…」
伍堂「限界…だったんだ…。このイベントだけは成功させたかったから…。そう思ったらつい…」
梅沢「なぁ、Q君。虫のいい話で申し訳ないのだが、この件は…」
Q「はい、黙っておきます」
梅沢「…え?」
今田「え?」
飯塚「え?」
伍堂「え?」
Q「伍堂さんがパックに薬品を仕込んだのは事実ですが、これは先ほども言ったとおり『不幸な事故』です。本来ならば『ちょっとこのカード臭くね?』で終わるようなことが様々な要因が重なって重なって、たまたま障害事件騒ぎにまでなってしまった、本当にただの不幸な事故です。
はっきり言って私も逝け☆麺のことが大嫌いです。最低限のマナーも守れずに対人ゲームをやる資格なんてありません。」
伍堂「Qさん…」
Q「それでもパックに薬仕込むのは間違いなくいけない行為です。これで伍堂さんの内に『バレなければ何をしてもいい』という気持ちが芽生えていたら私も一言言ったかもしれませんが…」チラ
伍堂「…?」
Q「一番後悔しているのは自分自身のようですし、その必要はないですよね?」
伍堂「……」
Q「探偵は真実を暴くまでが仕事ですけど、その真実をどう扱うかは依頼人次第です。
そこからは探偵の仕事ではありません。
…私個人としては、伍堂さんにもう二度とやらないという戒めと、注意する勇気を今後持って頂けたら満足です、他に何もいう事はありません。後はMTGを止めないで下さいってこと位ですね」
梅沢「…Q君」
Q「さて、話もひと段落したことですし呑み直しましょう。ほら、唐揚げ来てますよ」
飯塚「………」
~JR蒲田駅付近~
Q「ふぅ~、今日はお誘いありがとうございました」
伍堂「いえ…今日は…ありがとうございました」
Q「いえいえ、伍堂さんの方も頑張って下さいね。え~と、確か飯塚さん以外はみなさんJRですよね。ではここら辺で、お疲れ様でした」
今田「へ?あ…お疲れ様でした」
梅沢「Q君…お疲れ様」
Q「じゃあ私たちも行きましょうか」
飯塚「へ?…ええ」
~電車内~
Q「…飯塚さん」
飯塚「…はい、なんでしょう」
Q「飯塚さんは伍堂さんが犯人だって知っていましたよね?」
飯塚「…やっぱりばれてましたか?
はい…逝け☆麺が倒れた後から伍堂さんの顔が真っ青になっていて…それで『ああ、この人は何かしたんだな』と気付きました…。このまま放っておいたら自責の念で潰れちゃうんじゃないかって…それでいっその事全部洗いざらい真実を暴いてもらった方がいいんじゃないかと思いまして…」
Q「なるほど…ひょっとしたら分からないフリをした方がいいんじゃないかと思って、ヒヤヒヤしましたよ」
飯塚「ははは…でも真実を暴いてくれて安心しました…。伍堂さんも…多分これで安心です…」
Q「…ちなみに梅沢さんも伍堂さんが犯人だって分かっていたのをご存じでしたか?」
飯塚「え?」
Q「梅沢さんは終始伍堂さんをかばうような発言をしていました。人が倒れた時にも『熱中症で倒れた』という結論を出して早く話を切ろうとしていましたし、一番顕著だったのが『俺たちの中に犯人がいるはずがない』という発言でしたね。普通なら頭で否定せずに『誰が犯人なんだよ!?』と聞き返すと思うんですけどね」
飯塚「あ…」
Q「伍堂さんは本当にいい人です。いい人過ぎて強く言えなかったり、思い悩みすぎる節もあるかと思いますが、でも大丈夫。彼の周りには支えてくれる人が大勢います」
今田「そう…ですか…。うん、そうですよね」
Q「なので今田さんもあまり一人で悩みすぎずに、支える一人になってあげて下さい。もちろん私もいます」
今田「…ありがとうございます、Qさん」
Q「では私はJRなのでこの辺で」プシュー ガー
今田「…本当にあの人はもう…」
後で聞いた話だが、伍堂さんは大会の運営から身を引いて、今はプレイヤーとしてMTGを楽しんでいるそうだ。大会の方は今田さんが引き継いでいて、周りの人から助けられながらも、きちんと運営出来ているそうだ。
伍堂さんは以前の追い詰められたような雰囲気はなく、今は純粋にMTGを楽しんでいるようだった。私は彼に、もう一度MTGの楽しさを広める側になって、より多くの人と一緒に楽しめるようになって欲しいと願うばかりであった。
ギャザリング探偵Q 第3話「ドラフト殺人事件」 終
Q「それについては極単純な話です。ブースターパックの中に揮発性の高い薬品か、何かしらのガスを封入して被害者に吸わせたんです」ポチポチ
今田「え?そんなことしたら会場全体で異臭騒ぎが起こっちゃうじゃないですか!?」
Q「そこを詳しく説明するためには、まず倒れた被害者の事から詳しく説明する必要があります」ポチポチ
伍堂「…」
飯塚「…」
梅沢「…」
Q「まず、被害者の『逝け☆麺』氏ですが、彼は非常に素行もマナーも悪く、DN等でも有名な悪質プレイヤーです。構築ではトップメタのデッキばかりを使い、日記上では自分が使っているデッキ以外をとにかく馬鹿にして、負ければ『ブン回られた』と騒ぎ立てています。
大会に出ても勝てば相手のデッキにダメ出しをして、負ければすぐに不機嫌になってぶつぶつ言っているそうです。あと臭い。
そしてこれが有名になっている最大の理由でもありますが…パックを開ける時に鼻がカードに付く程に近付けて臭いを嗅ぐ悪癖があるようです。そして、それはドラフト中でも例外ではなく、むしろパックの臭いを嗅ぐために積極的に参加している節まであります」ヨムヨム
今田「あ…!!」
梅沢「…まぁ、あいつがどうしようもない奴だってのは知ってたけど、でもなんで伍堂が『逝け☆麺』に毒入りパックなんかをけしかけるんだ?なぁ、伍堂。お前あいつと知り合いだったのか?」
伍堂「いえ、そういう訳では…」
梅沢「なら伍堂が『逝け☆麺』を恨む動機なんてないんじゃないのか?なぁ、Q君」
伍堂「…」
Q「伍堂さんが『逝け☆麺』を恨む動機ならありますよ。それは伍堂さんが一番分かっているとは思いますが…まぁ、そこは私が言いましょう」
飯塚「!?」
Q「ところで伍堂さん、貴方は確か地元でMTGの大会運営をしていますね。確か…『KKK~Kamata Ka-do Kouyuukai~』…という大会で、毎週コンスタントに開いているようで素晴らしい限りです」
伍堂「え…?ええ…ありがとうございます。最近は常連の方も増えてきていまして…嬉しい限りです…」
Q「その大会に最近『逝け☆麺』が頻繁に出入りしているようですね」
伍堂「!!??」
Q「先ほど調べたのですが、先々月位に『逝け☆麺』のDNでこのようなタイトルの日記が投稿されていました。『地元の大会に凸って北www』。ここに乗せられている大会の『KKK~Kamata Ka-do Kouyuukai~』は伍堂さんが運営している大会の名前ですよね?」
伍堂「!!…はい……」
Q「そして伍堂さんの大会HPで公開している参加人数ですが、明らかに先々月から減っています。これはひょっとして『逝け☆麺』が大会に来てから減ったのではないでしょうか?」
伍堂「!!!!!!」
Q「これはあくまで憶測ですが…運営している大会を荒らされた貴方は『逝け☆麺』に対する恨みを募らせていたのではないでしょうか?それで今回の事件に至ったと…」
今田「いやいや、ちょっと待ってください!じゃあ伍堂さんは今回『逝け☆麺』がドラフトをしたいって騒ぎ立てるのを見越して毒入りパックを作ってきたってことですか!?」
Q「いえ、その可能性は低いと思います」
今田「え?」
Q「今日の伍堂さんの様子とTwitterのつぶやきを見る限りでは、普段から相当ストレスが溜まっているように見られます。そのストレスのはけ口として、普段から毒入りパックを作っていたのではないでしょうか?憎い『逝け☆麺』に叩き付けてやろうかと考えながら」
今田「伍堂さん、そうなんですか?」
伍堂「…」
Q「先ほど飯塚さんに見せて頂いたドラフトで使用したカードの中でコモンだけに何枚か裏側にしみが付いているものがありました。カードの並び順で考えるに、これらはパックの裏側に一番近いカードで、何らかの薬品がパックの裏から注入されていたという風に考えられます。
ただし、カードに少し染みつく位の薬品程度では普通体調を崩したりはしません。少し嗅ぐだけで気持ち悪くなるような強力な薬品は簡単には手に入りませんし、第一異臭騒ぎが起きて大会がめちゃくちゃになります。しかし、開封した直後に思いっきり吸えば話は別です。それならば弱い薬品でも体調は崩れる可能性は高くなりますし、異臭騒ぎも起こりにくいでしょう。
そして今回の被害者の癖を知りながらパックを用意出来る人物は伍堂さん、貴方しかいません」
今田「ご…伍堂さん、なんで今回に限って…」
Q「『今回』だからではないでしょうか?」
今田「?」
Q「今回のGPTトロウケアは200人を超える大盛況だったと聞きます。ここでもめ事が起きてしまったら大会進行にも影響が出るし、ヘッドジャッジである梅沢さんの負担も増える。そこで何かが弾けてしまった…」
梅沢「伍堂…このバカ野郎…、俺の心配なんかしやがって…」
伍堂「…」
Q「今回の事件は偶然に偶然が重なって起こってしまったことです。会場が熱中症になるほどに暑かった、『逝け☆麺』の体調が良かったら、もっとマナーが良かったりカードの臭いを嗅ぐ癖が無かったら、そもそも大会に来ていなかったら。そういった要因が積もり積もった結果起こってしまった、不幸な事故です」
今田「伍堂さん…Qさんの話、全部…デタラメ…ですよね…?」
伍堂「…いや、全部事実だよ」
伍堂「俺の大会にあいつが来てから全てがおかしくなったんだ…。
あいつが大会に出入りするようになってから急激に会場の雰囲気が悪くなっていった。言い争いは起こるし、あいつが参加するドラフトには誰も入りたがらない。常連だった人も離れていったよ…。あいつの癖を知ってからパックに薬を入れ始めるのにはそう時間はかからなかったよ。いつか我慢出来ない位にあいつが騒いだらこのパックでドラフトさせてやろう…と。そう思っていないと大会運営なんて出来ない位にストレスが溜まっていたんだ…。幸いにも今まで使う機会は無かったけど、今回は…どうしても我慢できなかったんだ…」
~GPTトロウケア 蒲田会場 2回戦~
逝け☆麺「すみません、ドラフトってまだですか?」
梅沢「え?ドラフトでしょうか?」
逝け☆麺「サイドイベント位開くんでしょ?GPTだし」
梅沢「…いえ、そのような予定はありませんが…」
逝け☆麺「はぁ!?マジかよ…クソが…」ブツブツ
梅沢「…なんだアイツ」ヒソヒソ
飯塚「DNで話題になってる『逝け☆麺』って奴です。伍堂さんの大会にもよく来てます」ヒソヒソ
梅沢「ああ、あのパックの臭いフェチとかいうのか。聞くに勝るクソ野郎っぷりだな」ヒソヒソ
今田「…騒ぎにならないうちにドラフト募集でもかけた方がいいんじゃないですかね?」
梅沢「それがさ…今日賞品のパック以外のブースターを忘れて、持って来てないんだよ…」
今田「マジっすか…」
逝け☆麺「…っち、ブン回りデッキばっかでやってらんねーわ…」ガンッ
伍堂「!!…すみません、椅子を蹴らないで頂けますか?」
逝け☆麺「…ち…すみませんでしたー…」
梅沢「…なぁ、あいつ摘み出していいか?」
飯塚「ちょ!?それはちょっと…」
梅沢「このままにしてたら他の参加者にも迷惑がかかるし、あんなのにコミュニケーションゲームやる資格ねーよ」
伍堂「う…梅沢さん、言いたいことは分かりますが、ここでもめたら大会の進行にも影響が…」
今田「梅沢さん、俺も手伝いますよ」
飯塚「今田さんまで!!」
ギャーギャー
伍堂「(なんでこんなことになったんだ…どうして…どうして…)」
伍堂「(………)」
伍堂「(…そうか…)」
伍堂「(全部あいつのせいだ…)」
伍堂「梅沢さん。私物のパックならあるんですけど、それで出来ませんかね?」
梅沢「ん?いいの?」
伍堂「はい。是非使ってください」
梅沢「じゃあお言葉に甘えて…」
伍堂「限界…だったんだ…。このイベントだけは成功させたかったから…。そう思ったらつい…」
梅沢「なぁ、Q君。虫のいい話で申し訳ないのだが、この件は…」
Q「はい、黙っておきます」
梅沢「…え?」
今田「え?」
飯塚「え?」
伍堂「え?」
Q「伍堂さんがパックに薬品を仕込んだのは事実ですが、これは先ほども言ったとおり『不幸な事故』です。本来ならば『ちょっとこのカード臭くね?』で終わるようなことが様々な要因が重なって重なって、たまたま障害事件騒ぎにまでなってしまった、本当にただの不幸な事故です。
はっきり言って私も逝け☆麺のことが大嫌いです。最低限のマナーも守れずに対人ゲームをやる資格なんてありません。」
伍堂「Qさん…」
Q「それでもパックに薬仕込むのは間違いなくいけない行為です。これで伍堂さんの内に『バレなければ何をしてもいい』という気持ちが芽生えていたら私も一言言ったかもしれませんが…」チラ
伍堂「…?」
Q「一番後悔しているのは自分自身のようですし、その必要はないですよね?」
伍堂「……」
Q「探偵は真実を暴くまでが仕事ですけど、その真実をどう扱うかは依頼人次第です。
そこからは探偵の仕事ではありません。
…私個人としては、伍堂さんにもう二度とやらないという戒めと、注意する勇気を今後持って頂けたら満足です、他に何もいう事はありません。後はMTGを止めないで下さいってこと位ですね」
梅沢「…Q君」
Q「さて、話もひと段落したことですし呑み直しましょう。ほら、唐揚げ来てますよ」
飯塚「………」
~JR蒲田駅付近~
Q「ふぅ~、今日はお誘いありがとうございました」
伍堂「いえ…今日は…ありがとうございました」
Q「いえいえ、伍堂さんの方も頑張って下さいね。え~と、確か飯塚さん以外はみなさんJRですよね。ではここら辺で、お疲れ様でした」
今田「へ?あ…お疲れ様でした」
梅沢「Q君…お疲れ様」
Q「じゃあ私たちも行きましょうか」
飯塚「へ?…ええ」
~電車内~
Q「…飯塚さん」
飯塚「…はい、なんでしょう」
Q「飯塚さんは伍堂さんが犯人だって知っていましたよね?」
飯塚「…やっぱりばれてましたか?
はい…逝け☆麺が倒れた後から伍堂さんの顔が真っ青になっていて…それで『ああ、この人は何かしたんだな』と気付きました…。このまま放っておいたら自責の念で潰れちゃうんじゃないかって…それでいっその事全部洗いざらい真実を暴いてもらった方がいいんじゃないかと思いまして…」
Q「なるほど…ひょっとしたら分からないフリをした方がいいんじゃないかと思って、ヒヤヒヤしましたよ」
飯塚「ははは…でも真実を暴いてくれて安心しました…。伍堂さんも…多分これで安心です…」
Q「…ちなみに梅沢さんも伍堂さんが犯人だって分かっていたのをご存じでしたか?」
飯塚「え?」
Q「梅沢さんは終始伍堂さんをかばうような発言をしていました。人が倒れた時にも『熱中症で倒れた』という結論を出して早く話を切ろうとしていましたし、一番顕著だったのが『俺たちの中に犯人がいるはずがない』という発言でしたね。普通なら頭で否定せずに『誰が犯人なんだよ!?』と聞き返すと思うんですけどね」
飯塚「あ…」
Q「伍堂さんは本当にいい人です。いい人過ぎて強く言えなかったり、思い悩みすぎる節もあるかと思いますが、でも大丈夫。彼の周りには支えてくれる人が大勢います」
今田「そう…ですか…。うん、そうですよね」
Q「なので今田さんもあまり一人で悩みすぎずに、支える一人になってあげて下さい。もちろん私もいます」
今田「…ありがとうございます、Qさん」
Q「では私はJRなのでこの辺で」プシュー ガー
今田「…本当にあの人はもう…」
後で聞いた話だが、伍堂さんは大会の運営から身を引いて、今はプレイヤーとしてMTGを楽しんでいるそうだ。大会の方は今田さんが引き継いでいて、周りの人から助けられながらも、きちんと運営出来ているそうだ。
伍堂さんは以前の追い詰められたような雰囲気はなく、今は純粋にMTGを楽しんでいるようだった。私は彼に、もう一度MTGの楽しさを広める側になって、より多くの人と一緒に楽しめるようになって欲しいと願うばかりであった。
ギャザリング探偵Q 第3話「ドラフト殺人事件」 終
ギャザリング探偵Q 第3話「ドラフト殺人事件」 前編
2014年8月7日 ギャザリング探偵Q コメント (6)~GPTトロウケア 蒲田会場 サイドイベントテーブル~
??「はぁ…はぁ…ドラー…フー…トー…」
??「ダメだ…気持ち悪い…ちょっと席を…」
フラッ
??「うっ…(ドサ」
~居酒屋「同情するなら酒飲みな!」~
ザワ・・・ザワ・・・
梅沢幾多郎「おーい、Qくーん。こっちこっちー!」
今田勇「Qさーん、お疲れ様です。とりあえずビールでいいっすか?」
伍堂武彦「あ…お疲れ様です」
飯塚勲「お仕事お疲れ様です。さ、こっちどうぞ」
梅沢「いや~、仕事帰りに誘っちゃって悪いね!さ、飲んで」トクトク
Q「いえいえ。お誘い頂きましてありがとうございます、梅沢さん。GPTのヘッドジャッジ、お疲れ様でした」
梅沢「いやいや、こいつらが頑張ってくれたおかげで大分楽出来たよ」
今田「ま、俺たちが手伝ったから当然でしょ!」
梅沢「何を~?こいつ、まだぺーぺーの癖して生意気な~!」
Q「ははは…。でも大成功だったみたいですね、GPT。なんでも参加人数が200人を超えたとか…」
梅沢「そう!全部で参加者224人!いや~、すごい人数だったわ~。おかげで会場クーラーガンガンに効かせてるのに全然涼しくならないのね。そのせいで倒れた人もいたしね」
Q「大丈夫だったんですか?」
今田「少し横になって水飲んだら落ち着いたみたいで、そのまま普通に帰ったみたいですよ。何せ大事に至らなくてよかったです」
飯塚「あ…Qさん。その倒れた人のことで話があるんですけど…これって…事件…だったりしませんか?」
Q「え?」
梅沢「お~い、飯塚ぁ~。あれはただ熱中症で倒れただけの話だろぉ~?」
飯塚「でも梅沢さん…万が一ってこともありますし…」
Q「ふむ…ちなみに倒れた方というのは誰なんでしょうか?」
今田「ああ、DNで『逝け☆麺』って名乗ってる人です。本名は愛野使徒っていうみたいですね」
Q「ああ…『あの』…。それで、どのような状況で倒れたんですか?」
今田「ん?ドラフトのピック中に『気持ち悪い』って言って席を立とうとしたら、立ち眩み起こして倒れたんですよ。すぐに立ち上がれたんですけど、それでもまっすぐ立てなかったみたいで、暫く椅子で横になってました」
Q「え?ドラフト中ですか?確か今回のGPTってモダンでしたよね?」
梅沢「あの『逝け☆麺』って野郎がドラフトしたいって騒いでたから急遽サイドイベントでドラフトすることになったんだ。あの野郎調子悪かったらしくて、3回戦終わる前にはもうドロップしてやがってたんだよ。それまでは別にいいけど、ドロップしてから『暇だ』だの『ここはサイドイベントも開かないのか』だの『参加者のことを考えろ』だのぶつぶつ煩くて、それでドラフトのサイドイベントを開くことになったんだよ」
今田「あの時はドラフト用のパック持って来てなくてどうしようかと思いましたよね。幸いにも伍堂さんが偶然持ってたのを使わせて貰ったから事なきを得ましたけど、今度からきちんと用意しないと駄目ですよね~」
梅沢「いや~、俺も商品のパック以外のことはすっかり忘れてたよ~。ありがとね、伍堂ちゃん!流石運営やってるだけはある!」
伍堂「あ…いや、本当に偶然ですよ…。確かに大会運営していると同じような場面もありますけど…」
梅沢「おっ!慣れてるねぇ~」
伍堂「いやいや…そんなことは…」
Q「ふむ…ちなみにそのドラフトで使ったカードってありますか?」
梅沢「Qちゃん、それは流石に残って…」
飯塚「あ、ここにありますよ」
今田「ってあるんですか!?」
飯塚「え?晴れる屋とかC・UCの一括買い取りしてますし、大会運営に携わってるとカード集められる機会も多いから、取っておいて溜まったら売りに行こうかなって…」
梅沢「いやいや、流石に学生だからってそれは貧乏性過ぎないか?」
Q「ふんふん…なるほど…」
飯塚「それでQさん、何か分かりましたか?」
梅沢「飯塚もしつけぇなぁ…あれはただの熱中症だっつーのに…」
Q「ふむ、確かにこれは誰かの手によって仕組まれたものですね」
一同「!!」
Q「話を聞く限りですと、犯人はこの中にいます」
梅沢「いや、俺たちの中にそんな奴いるわけねーよ!」
今田「そうですよ!第一どうやって『逝け☆麺』だけを倒れさせたんですか!?」
Q「結論から言いますと犯人は伍堂さんで、凶器はドラフトに使用したパックですね」
伍堂「!!??」
飯塚「Qさん…」
Q「では、今からそれを説明していきましょうか」
続く
??「はぁ…はぁ…ドラー…フー…トー…」
??「ダメだ…気持ち悪い…ちょっと席を…」
フラッ
??「うっ…(ドサ」
~居酒屋「同情するなら酒飲みな!」~
ザワ・・・ザワ・・・
梅沢幾多郎「おーい、Qくーん。こっちこっちー!」
今田勇「Qさーん、お疲れ様です。とりあえずビールでいいっすか?」
伍堂武彦「あ…お疲れ様です」
飯塚勲「お仕事お疲れ様です。さ、こっちどうぞ」
梅沢「いや~、仕事帰りに誘っちゃって悪いね!さ、飲んで」トクトク
Q「いえいえ。お誘い頂きましてありがとうございます、梅沢さん。GPTのヘッドジャッジ、お疲れ様でした」
梅沢「いやいや、こいつらが頑張ってくれたおかげで大分楽出来たよ」
今田「ま、俺たちが手伝ったから当然でしょ!」
梅沢「何を~?こいつ、まだぺーぺーの癖して生意気な~!」
Q「ははは…。でも大成功だったみたいですね、GPT。なんでも参加人数が200人を超えたとか…」
梅沢「そう!全部で参加者224人!いや~、すごい人数だったわ~。おかげで会場クーラーガンガンに効かせてるのに全然涼しくならないのね。そのせいで倒れた人もいたしね」
Q「大丈夫だったんですか?」
今田「少し横になって水飲んだら落ち着いたみたいで、そのまま普通に帰ったみたいですよ。何せ大事に至らなくてよかったです」
飯塚「あ…Qさん。その倒れた人のことで話があるんですけど…これって…事件…だったりしませんか?」
Q「え?」
梅沢「お~い、飯塚ぁ~。あれはただ熱中症で倒れただけの話だろぉ~?」
飯塚「でも梅沢さん…万が一ってこともありますし…」
Q「ふむ…ちなみに倒れた方というのは誰なんでしょうか?」
今田「ああ、DNで『逝け☆麺』って名乗ってる人です。本名は愛野使徒っていうみたいですね」
Q「ああ…『あの』…。それで、どのような状況で倒れたんですか?」
今田「ん?ドラフトのピック中に『気持ち悪い』って言って席を立とうとしたら、立ち眩み起こして倒れたんですよ。すぐに立ち上がれたんですけど、それでもまっすぐ立てなかったみたいで、暫く椅子で横になってました」
Q「え?ドラフト中ですか?確か今回のGPTってモダンでしたよね?」
梅沢「あの『逝け☆麺』って野郎がドラフトしたいって騒いでたから急遽サイドイベントでドラフトすることになったんだ。あの野郎調子悪かったらしくて、3回戦終わる前にはもうドロップしてやがってたんだよ。それまでは別にいいけど、ドロップしてから『暇だ』だの『ここはサイドイベントも開かないのか』だの『参加者のことを考えろ』だのぶつぶつ煩くて、それでドラフトのサイドイベントを開くことになったんだよ」
今田「あの時はドラフト用のパック持って来てなくてどうしようかと思いましたよね。幸いにも伍堂さんが偶然持ってたのを使わせて貰ったから事なきを得ましたけど、今度からきちんと用意しないと駄目ですよね~」
梅沢「いや~、俺も商品のパック以外のことはすっかり忘れてたよ~。ありがとね、伍堂ちゃん!流石運営やってるだけはある!」
伍堂「あ…いや、本当に偶然ですよ…。確かに大会運営していると同じような場面もありますけど…」
梅沢「おっ!慣れてるねぇ~」
伍堂「いやいや…そんなことは…」
Q「ふむ…ちなみにそのドラフトで使ったカードってありますか?」
梅沢「Qちゃん、それは流石に残って…」
飯塚「あ、ここにありますよ」
今田「ってあるんですか!?」
飯塚「え?晴れる屋とかC・UCの一括買い取りしてますし、大会運営に携わってるとカード集められる機会も多いから、取っておいて溜まったら売りに行こうかなって…」
梅沢「いやいや、流石に学生だからってそれは貧乏性過ぎないか?」
Q「ふんふん…なるほど…」
飯塚「それでQさん、何か分かりましたか?」
梅沢「飯塚もしつけぇなぁ…あれはただの熱中症だっつーのに…」
Q「ふむ、確かにこれは誰かの手によって仕組まれたものですね」
一同「!!」
Q「話を聞く限りですと、犯人はこの中にいます」
梅沢「いや、俺たちの中にそんな奴いるわけねーよ!」
今田「そうですよ!第一どうやって『逝け☆麺』だけを倒れさせたんですか!?」
Q「結論から言いますと犯人は伍堂さんで、凶器はドラフトに使用したパックですね」
伍堂「!!??」
飯塚「Qさん…」
Q「では、今からそれを説明していきましょうか」
続く
ギャザリング探偵Q 第2話「タルモを追え!」
2014年7月13日 ギャザリング探偵Q コメント (4)私は安佐 久太郎(あんさ きゅうたろう)。
人からは『ギャザリング探偵Q』などと呼ばれている。
私の元には多くの奇妙な依頼が届けられるが、今回の依頼はその中でも一段と奇妙なものだった。
その男は早朝から私の元に来て、自らを『時空警察』と名乗った。なんでも未来から来たそうだ。私は遠いところからはるばるお疲れ様ですと言いながらコーヒーを出してやると、その男はこう続けた。未来では慢性的なタルモゴイフ不足が続き、値上がりに値上がってついには10万円を超えている。そのタルモ不足の原因の一つとして、タイムトラベルによる未来予知発売後の買い占めがあり、彼ら時空警察は過去に戻って買い占めを行う時間犯罪者達と日々戦っているとのことだ。しかしどういう事か私たちがいるこの時代でタイムマシーンを手に入れた者がいて、そいつも未来予知発売後の過去に遡ってタルモゴイフの買い占めを行っているという。彼ら時空警察の中には「過去の人間に最低限以上の干渉することを禁ずる」というルールがあり、私たちの時代の人間がタイムトラベルをしても捕まえることは出来ないのだという。その為に、今回私にその時間犯罪者を捕まえるよう依頼しに来たということだ。
何とも馬鹿げた話だ。私は軽い気持ちで「依頼が何であれお受けいたしますよ。過去に戻る手段さえ用意してくれればね」と言い放つと、それを聞いた男はにやりと口を歪め、私の手を取った。
「今から君を未来予知発売後辺りのMTG大会会場近くに飛ばす。犯人はそこの会場でタルモの回収を行おうとしているらしい。犯人の手を握れば共に未来に強制送還され、捕まえることが出来る。ただし、チャンスは1度だけだ。間違えればその場で君だけが未来に送られる。タイムリミットはその日の17:00まで」
そういうと私の手に数字のようなものが浮かび、体がうっすら透け始めた。
「ああ、そうそう。大会参加する為のデッキは自分で用意してくれ。転送は今から1時間後だ。大丈夫、過去から戻って来ても時間は進んでいない。私が来た時間辺りに帰ってこれるだろう。では、前金はここに置いておく。残りは成功したら机の上に置かれることになるだろう。では、幸運を祈る」
そういうと男は出ていった。それと同時に私はストレージボックスをひっくり返し、デッキを作る作業に取り掛かった。
Q「(…で今に至るという訳か)」
Q「(気づけば屋外に立っていたが、新聞の日付を見る限り確かに未来予知発売直後辺りのようだ)」
Q「(…何はともあれ大会に参加しなければ始まらないな。服装はいつものものと変えてきたが、相手が私のことを知っているかもしれない。一応キャラも変えていこう)」
Q「…では、行くか」
~PGWCC 大会受付~
中本 メロス「おはようございます。大会のご参加は初めてですか?」
Q「チョリーッスwwwwwwはっじめってでーすwwwwww」
中本「そうですか、それでは参加費1,000円となります」
Q「ウィーッスwwwwwww」
Q「(無事参加出来たみたいだな。さて、どこか適当なところに)」
Q「あ、すんませんwwwwここ空いてますか?wwwwwww」
渡鍋上泉宗貞治「はい、空いていますよ」
Q「そういえば未来予知結構いいカード収録してますねwwwあれなんか結構出来る子だと思うんですよねwwwタルモゴイフwww」
渡鍋「そうですか?僕はナルコメーバが一番やばいと思いますけどね」
Q「(ふむ、他のプレイヤーも特に反応にはないな…。仕方ない、暫くは純粋に大会を楽しむとしよう)」
八百万岡 耶蘇「ウェーイwwwwwwwテフェリーwwwwwww」
Q「ウェーイwwwwww負けましたwwwwwwww」
Q「(コーラシュをフィニッシャーにした黒単コントロールで4-2か…急造のデッキにしては善戦出来た…かな?)」
Q「(しかし6回戦終わってもタルモを集めて回ってる人物は見かけなかったな…仕方ない、少し乱暴だが『奥の手』を使うか)」
Q「すんませーんwwwシャドーアート作りたいんで机一つ借りてもいいですかーwww」
中本「んー、いいですよー」
八百万岡「おwww何で作るんですかwww」
Q「これですwwwタルモゴイフwww」
野比 瀬和氏「!!(ガタッ」
Q「(…食いついてきたか)」
Q「ん?wwwどうしました?www」
野比「い…いや…それをシャドーアートにするのはちょっと勿体ないんじゃないかな…(ダラダラ」
Q「えーwww1枚100円なんだから大丈夫っしょーwwwwww絵柄もおしゃれだしーwwwこれはシャドーアート作るしかないっしょーwww」
野比「そ…それにここでシャドーアートなんか作ったらゴミが出て…」
中本「最後にきちんと片づけてくれたら問題ないよー」
野比「うっ!?」
渡鍋「どうしたんですか?顔色悪いですよ?」
野比「い…いや、なんでも…(ダラダラ」
Q「(あと一押しだな)」
Q「ぐさぁーっ!」
野比「タルモゴイフー!!」
ガシッ
Q「大丈夫です、刺すフリです。貴方が…未来から来た犯人ですね」
野比「うっ…うっ…。ただ…俺はタルモを無限回収したかっただけなんだ…。ハンスが捕まっているところが好きで…それで…それで…」
Q「だからと言って未来への遺産を奪ってはいけません」
野比「俺は…もう戻らなくてはいけないのか…」
Q「そうです、私たちはこの時代にいてはいけない人間なんです。帰りますよ、タルモゴイフが2万円の未来に」
中本「え?」
渡鍋「え?」
八百万岡「え?」
野比「うっ…いつか再録されますよね…」
Q「モダマス以外でもきっとしますよ、何せ『未来枠』なんですからね。それでは皆さん、お邪魔致しました」
フッ
中本「きっ、消えた!?」
八百万岡「100円のタルモゴイフが2万円…」
渡鍋「…」
気が付くと私は自分の部屋に戻っていた。時計は男が来る少し前の時間を指していて、新聞にはもうすぐM15が発売される今日の日付が書かれていた。過去に戻る前とは変わらないいつもの私の部屋だが、机の上にある2つの封筒が先ほどの出来事が夢ではなかったことを示している。どうやら依頼は無事にこなせたようだ。
本当に未来が変わったのか、私はパソコンを立ち上げてWisdom Guildでタルモゴイフの価格を調べてみた。すると平均価格が以前調べた価格よりも200円ばかり安くなっていた。私は少し苦笑して、まだ温かいコーヒーをすすった。
人からは『ギャザリング探偵Q』などと呼ばれている。
私の元には多くの奇妙な依頼が届けられるが、今回の依頼はその中でも一段と奇妙なものだった。
その男は早朝から私の元に来て、自らを『時空警察』と名乗った。なんでも未来から来たそうだ。私は遠いところからはるばるお疲れ様ですと言いながらコーヒーを出してやると、その男はこう続けた。未来では慢性的なタルモゴイフ不足が続き、値上がりに値上がってついには10万円を超えている。そのタルモ不足の原因の一つとして、タイムトラベルによる未来予知発売後の買い占めがあり、彼ら時空警察は過去に戻って買い占めを行う時間犯罪者達と日々戦っているとのことだ。しかしどういう事か私たちがいるこの時代でタイムマシーンを手に入れた者がいて、そいつも未来予知発売後の過去に遡ってタルモゴイフの買い占めを行っているという。彼ら時空警察の中には「過去の人間に最低限以上の干渉することを禁ずる」というルールがあり、私たちの時代の人間がタイムトラベルをしても捕まえることは出来ないのだという。その為に、今回私にその時間犯罪者を捕まえるよう依頼しに来たということだ。
何とも馬鹿げた話だ。私は軽い気持ちで「依頼が何であれお受けいたしますよ。過去に戻る手段さえ用意してくれればね」と言い放つと、それを聞いた男はにやりと口を歪め、私の手を取った。
「今から君を未来予知発売後辺りのMTG大会会場近くに飛ばす。犯人はそこの会場でタルモの回収を行おうとしているらしい。犯人の手を握れば共に未来に強制送還され、捕まえることが出来る。ただし、チャンスは1度だけだ。間違えればその場で君だけが未来に送られる。タイムリミットはその日の17:00まで」
そういうと私の手に数字のようなものが浮かび、体がうっすら透け始めた。
「ああ、そうそう。大会参加する為のデッキは自分で用意してくれ。転送は今から1時間後だ。大丈夫、過去から戻って来ても時間は進んでいない。私が来た時間辺りに帰ってこれるだろう。では、前金はここに置いておく。残りは成功したら机の上に置かれることになるだろう。では、幸運を祈る」
そういうと男は出ていった。それと同時に私はストレージボックスをひっくり返し、デッキを作る作業に取り掛かった。
Q「(…で今に至るという訳か)」
Q「(気づけば屋外に立っていたが、新聞の日付を見る限り確かに未来予知発売直後辺りのようだ)」
Q「(…何はともあれ大会に参加しなければ始まらないな。服装はいつものものと変えてきたが、相手が私のことを知っているかもしれない。一応キャラも変えていこう)」
Q「…では、行くか」
~PGWCC 大会受付~
中本 メロス「おはようございます。大会のご参加は初めてですか?」
Q「チョリーッスwwwwwwはっじめってでーすwwwwww」
中本「そうですか、それでは参加費1,000円となります」
Q「ウィーッスwwwwwww」
Q「(無事参加出来たみたいだな。さて、どこか適当なところに)」
Q「あ、すんませんwwwwここ空いてますか?wwwwwww」
渡鍋上泉宗貞治「はい、空いていますよ」
Q「そういえば未来予知結構いいカード収録してますねwwwあれなんか結構出来る子だと思うんですよねwwwタルモゴイフwww」
渡鍋「そうですか?僕はナルコメーバが一番やばいと思いますけどね」
Q「(ふむ、他のプレイヤーも特に反応にはないな…。仕方ない、暫くは純粋に大会を楽しむとしよう)」
八百万岡 耶蘇「ウェーイwwwwwwwテフェリーwwwwwww」
Q「ウェーイwwwwww負けましたwwwwwwww」
Q「(コーラシュをフィニッシャーにした黒単コントロールで4-2か…急造のデッキにしては善戦出来た…かな?)」
Q「(しかし6回戦終わってもタルモを集めて回ってる人物は見かけなかったな…仕方ない、少し乱暴だが『奥の手』を使うか)」
Q「すんませーんwwwシャドーアート作りたいんで机一つ借りてもいいですかーwww」
中本「んー、いいですよー」
八百万岡「おwww何で作るんですかwww」
Q「これですwwwタルモゴイフwww」
野比 瀬和氏「!!(ガタッ」
Q「(…食いついてきたか)」
Q「ん?wwwどうしました?www」
野比「い…いや…それをシャドーアートにするのはちょっと勿体ないんじゃないかな…(ダラダラ」
Q「えーwww1枚100円なんだから大丈夫っしょーwwwwww絵柄もおしゃれだしーwwwこれはシャドーアート作るしかないっしょーwww」
野比「そ…それにここでシャドーアートなんか作ったらゴミが出て…」
中本「最後にきちんと片づけてくれたら問題ないよー」
野比「うっ!?」
渡鍋「どうしたんですか?顔色悪いですよ?」
野比「い…いや、なんでも…(ダラダラ」
Q「(あと一押しだな)」
Q「ぐさぁーっ!」
野比「タルモゴイフー!!」
ガシッ
Q「大丈夫です、刺すフリです。貴方が…未来から来た犯人ですね」
野比「うっ…うっ…。ただ…俺はタルモを無限回収したかっただけなんだ…。ハンスが捕まっているところが好きで…それで…それで…」
Q「だからと言って未来への遺産を奪ってはいけません」
野比「俺は…もう戻らなくてはいけないのか…」
Q「そうです、私たちはこの時代にいてはいけない人間なんです。帰りますよ、タルモゴイフが2万円の未来に」
中本「え?」
渡鍋「え?」
八百万岡「え?」
野比「うっ…いつか再録されますよね…」
Q「モダマス以外でもきっとしますよ、何せ『未来枠』なんですからね。それでは皆さん、お邪魔致しました」
フッ
中本「きっ、消えた!?」
八百万岡「100円のタルモゴイフが2万円…」
渡鍋「…」
気が付くと私は自分の部屋に戻っていた。時計は男が来る少し前の時間を指していて、新聞にはもうすぐM15が発売される今日の日付が書かれていた。過去に戻る前とは変わらないいつもの私の部屋だが、机の上にある2つの封筒が先ほどの出来事が夢ではなかったことを示している。どうやら依頼は無事にこなせたようだ。
本当に未来が変わったのか、私はパソコンを立ち上げてWisdom Guildでタルモゴイフの価格を調べてみた。すると平均価格が以前調べた価格よりも200円ばかり安くなっていた。私は少し苦笑して、まだ温かいコーヒーをすすった。
ギャザリング探偵Q 第1話「消えたアルファ」
2014年7月10日 ギャザリング探偵Q コメント (3)20年以上の歴史を持つ世界最古のTCG、マジック・ザ・ギャザリング。
「もっともよく遊ばれているTCG」としてギネスに認定されているこのカードゲームは、長い歴史を持つものの宿命として、いくつもの深い闇と葬られてきた謎を抱えていた。
しかし、その深い闇を晴らそうと戦う一人の男がいた。
その男は安佐 久太郎(あんさ きゅうたろう)!
人呼んで『ギャザリング探偵Q』!!
これは闇の中、真実を追い求めた一人の男の物語である。
~都内 某豪邸~
(コンコン)
?「……こんばんは、安佐です」
ガチャ
金田 望夫(かねだ もちお)「おお…待っていたよ、安佐君…いや、ギャザリング探偵『Q』」
金田「夜分遅く申し訳ないね…何せ火急の用事だったから……」カツ カツ
Q「いえ、構いません。皆様はもうお集まりで?」カツ カツ
金田「ええ、こちらです」ガチャ
鯖須 張(さばす ちゃん)「旦那様、そちら方は?」
山本 デンドロビッチ(やまもと でんどろびっち)「一体こんな遅くに集められて…どうされたのですか?」
高司 田宮麿(たかつかさ たみやまろ)「んっん~!旦那様ぁ~ん!?理由を教えて下さいましぃ~ん!」
Q「ほう…この方たちが今日屋敷に出入りしていた使用人の方々ですか…」
高司「んっん~、それが何か?」
Q「金田さん、この中に貴方の『アルファ』を盗んだ犯人がいるということですね?」
3人「なっ!?」
鯖須「どういう事ですか、旦那様!?」
山本「私たちが…えっと、ア…アルファ?を盗む?何かを盗むなど、そんなことはするはずがありません!」
高司「旦那さまぁ~ん!事情をお話下さいましぃ~ん!!」
金田「実はな…今日、私の部屋から『アルファ』のパックが無くなっていたのだ…」
Q「ちなみにその『アルファ』はどのような状態で置いてあったのですか?」
金田「透明なフォトフレームに挟んで私の机の上に…」
Q「なるほど、誰でも手にとれる状態だったのですね。ちなみに金田さんの周りで『アルファ』を欲しがっていた方などはいらっしゃいましたか?」
金田「いや、特には…。それに防犯システムも作動していなかったし、机の上も『アルファ』が無くなった以外そのままだったんだ…。そうなると身内の者の仕業としか思えないのだよ…」
金田「しかし彼らに聞いても知らないと…、あれは私が還暦を迎えた時に開けようと思っていた大切なパックだったのに…うぅ…」
Q「心中お察し致します」
山本「私が旦那様の部屋を掃除した時は特に何も変わっていなかったと思ったのですが…パック?ですか?」
Q「そう、これです」ピラッ
山本「ああ、確かにそんなのが机の上に飾られていました」
高司「んっん~、随分と古そうなものだけど…それってどういうものなの?」
鯖巣「……」
金田「きゅ…Q君!なぜ君がそれを!?」
Q「これはマジック・ザ・ギャザリングというカードゲームが入っているカードパックです。まぁ、とりあえず開けてみましょう」ビリッ
山本「随分レトロなイラストですね~」
高司「旦那様の思い出の品なのかしらぁ~ん?」
金田・鯖巣「あああああああああああああああああ!!」ガタッ
山本・高司「!?」
金田「きゅきゅきゅQくううううううん!!君は!なんてことを!したんだ!!」
鯖巣「Q様!何故そのようなことを!?」
山本「え?え?何かいけないんですか?」
金田「山本君!今Q君が開けたパックは『アルファ』と言って、MTG最初のブースターパックなんだ!未開封のものは1千万円を超えるんだぞ!」
山本「うそ?一千万!?」
高司「車より高いじゃない!!」
金田「ああ…君はなんてことをしてくれたんだ…」
Q「金田さん、よく見てください」
金田「別に見ても…ん?」
鯖巣「これは…」
Q「そう、これは私が作った偽物です。似たような袋を印刷して別のカードを入れただけです」
金田「なんだ…人騒がせな…」
Q「すみません、ですが…犯人は見つかりました」
金田「ほ、本当かね!?」
Q「ええ。犯人は…鯖巣さん、貴方だ」
鯖巣「!?」
他「!?」
鯖巣「わっ…私が!?ご冗談でしょう!?」
Q「貴方は私がパックを剥いたとき、大変驚いておりましたね?これは価値を分かっていないと出来ない反応です」
鯖巣「か…カードの価値を分かっていたから…だからって、それだけで犯人とはいささか暴論ではないでしょうか?」
Q「アルファのパックはコレクターズアイテムなので、いくら価値が高くとも金品を換金するようにはいきません。一番確実なのはオークションに出すことですが、金田さん程のコレクターでしたら情報はすぐに入ってくるでしょうし、バレずに売り切るというのはまず不可能でしょう」
Q「では犯人は何故パックを盗んだのか?考えられる動機は二つ。自分もコレクターであり、アルファのパックが欲しかったから。もう一つは…買ってくれる知人がいるか…」
鯖巣「!?」
Q「どちらにせよ、犯人は深いカードの知識を持っているMTGプレイヤーだと想像されます。金田さんとの周りではアルファのパックを欲しがっていた方はいなかったようですし、自分がMTGをやっていなければアルファ・ブースターの話なんて出てこないでしょう」
金田「鯖巣君…本当かね!?」
鯖巣「ち…違うんですよ、旦那様。そのパックの価値はたまたまネット・ニュースで知っていて…。あの『子供が二千万円以上の未開封パックを開封してしまって弁償することになった』というニュースです」
高司「あぁ~ん、そういえばちょっと話題になってたかもぉ~ん」
鯖巣「でしょ?そうでしょう!?」
Q「ほう…では貴方はMTGのことについては全く知らないと?」
鯖巣「その通りです」
Q「…嘘ですね」
鯖巣「何ですと!?」
Q「貴方は私がカードを見せたとき、偽のパックだと明かす前だというのにネタ晴らしされたような表情をしていましたね!?それは何故ですか!?」
鯖巣「そ…それは…20年以上前のカードだというのに新しかったから…」
Q「ほう?このリバイズドのカードが新しいと?これも20年以上前に発売されたのに?」
鯖巣「うぐうううううううう!!」
Q「この違いが分かるなんて一般人や聞きかじりの知識だけでは無理です。鯖巣さん、貴方もMTGを愛するものとして真実を話して下さい」
金田「鯖巣君…君が…そうなのかね?」
鯖巣「………旦那様」
その後、鯖巣は自分がパックを盗んだ犯人だと認めた。
借金の返済に追われていたところ、知人のコレクターにそそのかされて犯行に及んだのだという。金田はパックも無事に戻ってきたのでこれ以上追及する気はないと言ったが、鯖巣は自ら責任を取って屋敷を去ることとなった。
~数日後~
鯖巣「それでは皆様、お世話になりました…」
金田「鯖巣君…」
鯖巣「旦那様…ご迷惑をおかけして本当に申し訳ございませんでした。私が金に目がくらんだばかりに…同じMTGを愛する旦那様の気持ちを踏みにじってしまいました」
金田「…鯖巣君、私は自分の還暦の誕生日にアルファ・パックの開封式をするつもりだ。その時は是非君にも来て欲しい」
鯖巣「旦那様……」
金田「その時は一緒にドラフトでもしようじゃないか(ニコッ」
鯖巣「旦那様…!!ありがとうございます…ありがとうございます…!」
山本「…こんなこというのも何ですけど、MTGっていいですね」
高司「そうねぇ~ん。恐ろしい部分もあると思うけど、本当はみんなで楽しむコミュニケーションツールだと思うわよぉ~ん?」
山本「…私たちもやってみませんか?」
高司「あんまり高いカードは勘弁ねぇん?(ニヤリ」
どんな闇の中にも一筋の光はある。
Qはその光をつかむために、これからも真実を暴いていく。
ギャザリング探偵Q 第1話「消えたアルファ」 終
「もっともよく遊ばれているTCG」としてギネスに認定されているこのカードゲームは、長い歴史を持つものの宿命として、いくつもの深い闇と葬られてきた謎を抱えていた。
しかし、その深い闇を晴らそうと戦う一人の男がいた。
その男は安佐 久太郎(あんさ きゅうたろう)!
人呼んで『ギャザリング探偵Q』!!
これは闇の中、真実を追い求めた一人の男の物語である。
~都内 某豪邸~
(コンコン)
?「……こんばんは、安佐です」
ガチャ
金田 望夫(かねだ もちお)「おお…待っていたよ、安佐君…いや、ギャザリング探偵『Q』」
金田「夜分遅く申し訳ないね…何せ火急の用事だったから……」カツ カツ
Q「いえ、構いません。皆様はもうお集まりで?」カツ カツ
金田「ええ、こちらです」ガチャ
鯖須 張(さばす ちゃん)「旦那様、そちら方は?」
山本 デンドロビッチ(やまもと でんどろびっち)「一体こんな遅くに集められて…どうされたのですか?」
高司 田宮麿(たかつかさ たみやまろ)「んっん~!旦那様ぁ~ん!?理由を教えて下さいましぃ~ん!」
Q「ほう…この方たちが今日屋敷に出入りしていた使用人の方々ですか…」
高司「んっん~、それが何か?」
Q「金田さん、この中に貴方の『アルファ』を盗んだ犯人がいるということですね?」
3人「なっ!?」
鯖須「どういう事ですか、旦那様!?」
山本「私たちが…えっと、ア…アルファ?を盗む?何かを盗むなど、そんなことはするはずがありません!」
高司「旦那さまぁ~ん!事情をお話下さいましぃ~ん!!」
金田「実はな…今日、私の部屋から『アルファ』のパックが無くなっていたのだ…」
Q「ちなみにその『アルファ』はどのような状態で置いてあったのですか?」
金田「透明なフォトフレームに挟んで私の机の上に…」
Q「なるほど、誰でも手にとれる状態だったのですね。ちなみに金田さんの周りで『アルファ』を欲しがっていた方などはいらっしゃいましたか?」
金田「いや、特には…。それに防犯システムも作動していなかったし、机の上も『アルファ』が無くなった以外そのままだったんだ…。そうなると身内の者の仕業としか思えないのだよ…」
金田「しかし彼らに聞いても知らないと…、あれは私が還暦を迎えた時に開けようと思っていた大切なパックだったのに…うぅ…」
Q「心中お察し致します」
山本「私が旦那様の部屋を掃除した時は特に何も変わっていなかったと思ったのですが…パック?ですか?」
Q「そう、これです」ピラッ
山本「ああ、確かにそんなのが机の上に飾られていました」
高司「んっん~、随分と古そうなものだけど…それってどういうものなの?」
鯖巣「……」
金田「きゅ…Q君!なぜ君がそれを!?」
Q「これはマジック・ザ・ギャザリングというカードゲームが入っているカードパックです。まぁ、とりあえず開けてみましょう」ビリッ
山本「随分レトロなイラストですね~」
高司「旦那様の思い出の品なのかしらぁ~ん?」
金田・鯖巣「あああああああああああああああああ!!」ガタッ
山本・高司「!?」
金田「きゅきゅきゅQくううううううん!!君は!なんてことを!したんだ!!」
鯖巣「Q様!何故そのようなことを!?」
山本「え?え?何かいけないんですか?」
金田「山本君!今Q君が開けたパックは『アルファ』と言って、MTG最初のブースターパックなんだ!未開封のものは1千万円を超えるんだぞ!」
山本「うそ?一千万!?」
高司「車より高いじゃない!!」
金田「ああ…君はなんてことをしてくれたんだ…」
Q「金田さん、よく見てください」
金田「別に見ても…ん?」
鯖巣「これは…」
Q「そう、これは私が作った偽物です。似たような袋を印刷して別のカードを入れただけです」
金田「なんだ…人騒がせな…」
Q「すみません、ですが…犯人は見つかりました」
金田「ほ、本当かね!?」
Q「ええ。犯人は…鯖巣さん、貴方だ」
鯖巣「!?」
他「!?」
鯖巣「わっ…私が!?ご冗談でしょう!?」
Q「貴方は私がパックを剥いたとき、大変驚いておりましたね?これは価値を分かっていないと出来ない反応です」
鯖巣「か…カードの価値を分かっていたから…だからって、それだけで犯人とはいささか暴論ではないでしょうか?」
Q「アルファのパックはコレクターズアイテムなので、いくら価値が高くとも金品を換金するようにはいきません。一番確実なのはオークションに出すことですが、金田さん程のコレクターでしたら情報はすぐに入ってくるでしょうし、バレずに売り切るというのはまず不可能でしょう」
Q「では犯人は何故パックを盗んだのか?考えられる動機は二つ。自分もコレクターであり、アルファのパックが欲しかったから。もう一つは…買ってくれる知人がいるか…」
鯖巣「!?」
Q「どちらにせよ、犯人は深いカードの知識を持っているMTGプレイヤーだと想像されます。金田さんとの周りではアルファのパックを欲しがっていた方はいなかったようですし、自分がMTGをやっていなければアルファ・ブースターの話なんて出てこないでしょう」
金田「鯖巣君…本当かね!?」
鯖巣「ち…違うんですよ、旦那様。そのパックの価値はたまたまネット・ニュースで知っていて…。あの『子供が二千万円以上の未開封パックを開封してしまって弁償することになった』というニュースです」
高司「あぁ~ん、そういえばちょっと話題になってたかもぉ~ん」
鯖巣「でしょ?そうでしょう!?」
Q「ほう…では貴方はMTGのことについては全く知らないと?」
鯖巣「その通りです」
Q「…嘘ですね」
鯖巣「何ですと!?」
Q「貴方は私がカードを見せたとき、偽のパックだと明かす前だというのにネタ晴らしされたような表情をしていましたね!?それは何故ですか!?」
鯖巣「そ…それは…20年以上前のカードだというのに新しかったから…」
Q「ほう?このリバイズドのカードが新しいと?これも20年以上前に発売されたのに?」
鯖巣「うぐうううううううう!!」
Q「この違いが分かるなんて一般人や聞きかじりの知識だけでは無理です。鯖巣さん、貴方もMTGを愛するものとして真実を話して下さい」
金田「鯖巣君…君が…そうなのかね?」
鯖巣「………旦那様」
その後、鯖巣は自分がパックを盗んだ犯人だと認めた。
借金の返済に追われていたところ、知人のコレクターにそそのかされて犯行に及んだのだという。金田はパックも無事に戻ってきたのでこれ以上追及する気はないと言ったが、鯖巣は自ら責任を取って屋敷を去ることとなった。
~数日後~
鯖巣「それでは皆様、お世話になりました…」
金田「鯖巣君…」
鯖巣「旦那様…ご迷惑をおかけして本当に申し訳ございませんでした。私が金に目がくらんだばかりに…同じMTGを愛する旦那様の気持ちを踏みにじってしまいました」
金田「…鯖巣君、私は自分の還暦の誕生日にアルファ・パックの開封式をするつもりだ。その時は是非君にも来て欲しい」
鯖巣「旦那様……」
金田「その時は一緒にドラフトでもしようじゃないか(ニコッ」
鯖巣「旦那様…!!ありがとうございます…ありがとうございます…!」
山本「…こんなこというのも何ですけど、MTGっていいですね」
高司「そうねぇ~ん。恐ろしい部分もあると思うけど、本当はみんなで楽しむコミュニケーションツールだと思うわよぉ~ん?」
山本「…私たちもやってみませんか?」
高司「あんまり高いカードは勘弁ねぇん?(ニヤリ」
どんな闇の中にも一筋の光はある。
Qはその光をつかむために、これからも真実を暴いていく。
ギャザリング探偵Q 第1話「消えたアルファ」 終