私は安佐 久太郎(あんさ きゅうたろう)。
人からは『ギャザリング探偵Q』などと呼ばれている。

 私の元には多くの奇妙な依頼が届けられるが、今回の依頼はその中でも一段と奇妙なものだった。
 その男は早朝から私の元に来て、自らを『時空警察』と名乗った。なんでも未来から来たそうだ。私は遠いところからはるばるお疲れ様ですと言いながらコーヒーを出してやると、その男はこう続けた。未来では慢性的なタルモゴイフ不足が続き、値上がりに値上がってついには10万円を超えている。そのタルモ不足の原因の一つとして、タイムトラベルによる未来予知発売後の買い占めがあり、彼ら時空警察は過去に戻って買い占めを行う時間犯罪者達と日々戦っているとのことだ。しかしどういう事か私たちがいるこの時代でタイムマシーンを手に入れた者がいて、そいつも未来予知発売後の過去に遡ってタルモゴイフの買い占めを行っているという。彼ら時空警察の中には「過去の人間に最低限以上の干渉することを禁ずる」というルールがあり、私たちの時代の人間がタイムトラベルをしても捕まえることは出来ないのだという。その為に、今回私にその時間犯罪者を捕まえるよう依頼しに来たということだ。
何とも馬鹿げた話だ。私は軽い気持ちで「依頼が何であれお受けいたしますよ。過去に戻る手段さえ用意してくれればね」と言い放つと、それを聞いた男はにやりと口を歪め、私の手を取った。
「今から君を未来予知発売後辺りのMTG大会会場近くに飛ばす。犯人はそこの会場でタルモの回収を行おうとしているらしい。犯人の手を握れば共に未来に強制送還され、捕まえることが出来る。ただし、チャンスは1度だけだ。間違えればその場で君だけが未来に送られる。タイムリミットはその日の17:00まで」
そういうと私の手に数字のようなものが浮かび、体がうっすら透け始めた。
「ああ、そうそう。大会参加する為のデッキは自分で用意してくれ。転送は今から1時間後だ。大丈夫、過去から戻って来ても時間は進んでいない。私が来た時間辺りに帰ってこれるだろう。では、前金はここに置いておく。残りは成功したら机の上に置かれることになるだろう。では、幸運を祈る」
そういうと男は出ていった。それと同時に私はストレージボックスをひっくり返し、デッキを作る作業に取り掛かった。



Q「(…で今に至るという訳か)」
Q「(気づけば屋外に立っていたが、新聞の日付を見る限り確かに未来予知発売直後辺りのようだ)」
Q「(…何はともあれ大会に参加しなければ始まらないな。服装はいつものものと変えてきたが、相手が私のことを知っているかもしれない。一応キャラも変えていこう)」

Q「…では、行くか」


~PGWCC 大会受付~
中本 メロス「おはようございます。大会のご参加は初めてですか?」
Q「チョリーッスwwwwwwはっじめってでーすwwwwww」
中本「そうですか、それでは参加費1,000円となります」
Q「ウィーッスwwwwwww」

Q「(無事参加出来たみたいだな。さて、どこか適当なところに)」

Q「あ、すんませんwwwwここ空いてますか?wwwwwww」
渡鍋上泉宗貞治「はい、空いていますよ」

Q「そういえば未来予知結構いいカード収録してますねwwwあれなんか結構出来る子だと思うんですよねwwwタルモゴイフwww」
渡鍋「そうですか?僕はナルコメーバが一番やばいと思いますけどね」

Q「(ふむ、他のプレイヤーも特に反応にはないな…。仕方ない、暫くは純粋に大会を楽しむとしよう)」


八百万岡 耶蘇「ウェーイwwwwwwwテフェリーwwwwwww」
Q「ウェーイwwwwww負けましたwwwwwwww」

Q「(コーラシュをフィニッシャーにした黒単コントロールで4-2か…急造のデッキにしては善戦出来た…かな?)」
Q「(しかし6回戦終わってもタルモを集めて回ってる人物は見かけなかったな…仕方ない、少し乱暴だが『奥の手』を使うか)」

Q「すんませーんwwwシャドーアート作りたいんで机一つ借りてもいいですかーwww」
中本「んー、いいですよー」

八百万岡「おwww何で作るんですかwww」
Q「これですwwwタルモゴイフwww」

野比 瀬和氏「!!(ガタッ」

Q「(…食いついてきたか)」
Q「ん?wwwどうしました?www」

野比「い…いや…それをシャドーアートにするのはちょっと勿体ないんじゃないかな…(ダラダラ」
Q「えーwww1枚100円なんだから大丈夫っしょーwwwwww絵柄もおしゃれだしーwwwこれはシャドーアート作るしかないっしょーwww」

野比「そ…それにここでシャドーアートなんか作ったらゴミが出て…」
中本「最後にきちんと片づけてくれたら問題ないよー」
野比「うっ!?」

渡鍋「どうしたんですか?顔色悪いですよ?」
野比「い…いや、なんでも…(ダラダラ」

Q「(あと一押しだな)」

Q「ぐさぁーっ!」
野比「タルモゴイフー!!」

ガシッ

Q「大丈夫です、刺すフリです。貴方が…未来から来た犯人ですね」
野比「うっ…うっ…。ただ…俺はタルモを無限回収したかっただけなんだ…。ハンスが捕まっているところが好きで…それで…それで…」
Q「だからと言って未来への遺産を奪ってはいけません」
野比「俺は…もう戻らなくてはいけないのか…」
Q「そうです、私たちはこの時代にいてはいけない人間なんです。帰りますよ、タルモゴイフが2万円の未来に」

中本「え?」
渡鍋「え?」
八百万岡「え?」

野比「うっ…いつか再録されますよね…」
Q「モダマス以外でもきっとしますよ、何せ『未来枠』なんですからね。それでは皆さん、お邪魔致しました」

フッ

中本「きっ、消えた!?」
八百万岡「100円のタルモゴイフが2万円…」
渡鍋「…」





気が付くと私は自分の部屋に戻っていた。時計は男が来る少し前の時間を指していて、新聞にはもうすぐM15が発売される今日の日付が書かれていた。過去に戻る前とは変わらないいつもの私の部屋だが、机の上にある2つの封筒が先ほどの出来事が夢ではなかったことを示している。どうやら依頼は無事にこなせたようだ。
本当に未来が変わったのか、私はパソコンを立ち上げてWisdom Guildでタルモゴイフの価格を調べてみた。すると平均価格が以前調べた価格よりも200円ばかり安くなっていた。私は少し苦笑して、まだ温かいコーヒーをすすった。

コメント

re-giant
2014年7月13日10:24

面白かったです。
書き出しの推理小説感と安佐さんのノリの意外な軽さが好きです。

猛蔵
2014年7月13日10:53

ありがとうございます!
推理(ぶつり)な作品ですが、頑張って推理小説感出してみました。

おくたん
2014年7月15日8:42

あれ、この犯人の思想と私の思想が同じ…!?

猛蔵
2014年7月16日0:08

タルモ「無限回収?無限回収?(チラッチラッ」

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